和光大学同窓会では、現在災害用トイレの研究をされている近藤さんにお話を伺ってきました。
快く取材を受けてくださいました近藤さんにお礼申し上げます。
災害用トイレの研究と普及活動に楽しく取り組む
家庭にあるものを利用!臭くない!捨てる必要なし!
近藤志郎さん
和光大学 芸術学部芸術学科(当時)1945年卒業
取材日:2018年7月14日
聞き手:和光大学同窓会 窪田 前田 柳沢
記事作成:和光大学同窓会 窪田
写真:和光大学同窓会 窪田 前田
■和光大学を選んだ理由について教えてください
中学の時から芸術に興味があり、都内のいろいろな大学を受けたのですが、落ちてしまったので、和光大学を受けました。入試は石膏デッサンでした。
■大学時代は何を専攻されていたのですか?
芸術学科でデザインです。私は視覚伝達論という写真や動画を使って表現することが好きで、あの頃はモノクロで16ミリフィルムを使って撮影ばかりしていました。映画は35ミリフィルムの時代ですね。
■卒制はどんなものを作られたのですか?
まず、喫茶店をやろうと思い立ち自宅の5部屋を壊しました。次に天井などすべて曲線で丸い空間を作っていき、ペンキで色を塗るときも色の濃い部分からだんだんと薄くなるグラデーションや天井には雲を描いたり、キッチンも自分で設置して50名が座れる広いホールのような空間を造りました。
また、お店の名前は「がらんどう」と響きに合わせて漢字を当てはめていったところ【伽藍洞】になりました。その後、辞書を開いたら仏教用語で伽藍堂とあり、意味として「無ではなく空(くう)である」「空(くう)の世界とは枠だけあって中は何もない状態のこと」と書いてあった。これはちょうどいいなあと思いました。
そして、同級生に中学校の教頭をしていたクマさんにお願いして、学校で必要のなくなった椅子50脚もらい、それを客席におきました。店内の雰囲気づくりとして、波の音・川の音などヒーリング音楽を流し、喫茶店が完成したのが卒業した年の6月です。卒制提出期限に間に合わず、完成してからタキ先生に来ていただきましたが、すでに卒業しているので判定も意味ないですね。
■災害用トイレを作るきっかけはなんだったのですか?
僕はまっさらなところから作り出すことが好きで、千葉にある山林の斜面に家を建てたことが始まりです。
この家では水道を引いていないため、ペットボトルに東京の水道を入れ持っていき、これを飲み水や料理をする際に使う水として、あとは雨水を8メートルほどの養豚用タンクに貯めて生活用水にしました。
そして水洗用トイレをつけ、排泄物を処理する浄化槽を購入するから設置方法を聞きたいと地元の農家の方にうかがったところ、「年に数回しか使わない家で高い浄化槽機器なんて買わず、外に穴掘ってそこに垂れ流しで大丈夫だよ」といわれ、半信半疑だったが家から10メートルほど離れた場所に穴を掘り、その穴に排泄物が入るようパイプを取り付けました。
7か月ほど立ち、排泄物を処理しようとマスクとゴムの手袋をし『嫌だな』と思いながら、かぶせてある丸太をどけてみると木の屑みたいなものが落ちているだけで、排泄物自体が見えず臭いもなく『どこにいったのだろう?』と棒で掘り起こしてみた。でも形のあるものがなく、ただそこには柔らかな土があるだけでした。偶然が重なり、僕は洗剤や消毒液を使わず雨水だけでトイレを使っていたため、微生物が死滅せず排泄物を分解していると気づきました。
■災害用トイレを提案するようになった経緯を教えてください
元々住民フォーラムに参加していたのですが、その頃東日本大震災があり、さまざまな雑誌などを読むうちに被災者の方々がトイレに困っていることが書
■なぜ排泄物は分解されるのですか?かれていました。それを見て『なんとかしたい』と思い、住民フォーラム内で自分の経験を発信したところ、やってみようということになり実証実験がはじまりました。正直、失敗の連続でした。
便を使う実験は誰も賛成せず、焼いたさんまや生ごみで始めました。やはり便はカラダの中で細かく砕かれたものが排泄されているため、細かくなっていますがさんまや生ごみは形として残っていますし分解するまでに時間がかかりました。約1か月です。そういった実験を繰り返し最終的には便でトライして、【災害用トイレ 花咲かすトイレ】ができました。現在特許申請中となります。
便の7パーセントは腸内環境の死骸、6パーセントは腸壁、80パーセントは水分です。それが蒸発すると20パーセントがカスとなり、微生物が砕いてくれるため3日ほどで分解されます。便にいる好気性菌は、空気をほしがる菌のため、水分でぬれすぎるとダメですが、排泄後の土は混ぜて空気をどんどん菌に与えてほしいですね。加えて、トイレットペーパーについても入れていただいて問題ありません。日本の紙は水の中に入れて5秒間でバラバラになるんですよ。
■花咲かすトイレの仕組みは簡単です
<作り方>
1)衣料用プラスチックケースなどを用意してください
2)個室やお風呂場など安心してトイレができる場所に置いてください
3)プランターの土や庭にある土をいれてください(ケースの半分より少し多めにいれてください)
4)座れるようにケースにあう木などの板を2枚差し渡します(板の幅は10~12センチほどで大丈夫です)
※気になる方は板に布をはるなどすると座りやすくなります
5)不要になった土は花を植える際に再利用できます
<使い方>
1)トイレットペーパーも少しの水でとけますので近くに置いておいてください
2)トイレをした後は少しの水をかけます
3)シャベルなどで土をまぜる
※シャベルがない場合にはフライ返しなど別のもので代用することが可能です
※インタビュー直後に、西日本豪雨被害に遭われたみなさまへ即ご活用いただきたく、和光大学同窓会ホームページで詳しいご案内ページを設けました。こちらも併せてご覧ください。
近藤さんは、テレビで見たフィギュアスケートの羽生結弦選手が東日本大震災時に避難所生活をしており、大きなストレスはトイレであるとインタビューで答えていたことも心に残ったとのこと。気負ったところはみじんもなく、なんでも楽しくやらなくっちゃね、と終始穏やかな笑顔で話をしてくれました。全てが未知数だった和光大学を選んだ一期生の懐の深さを感じた2時間でした。また、11月の総会後に近藤さんのお話を聞く会を持つ予定ですのでお楽しみに。